本「不運な女」
2006-06-14


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不運な女  リチャード・ブローティガン著  藤本和子訳

 ブローティガンは1984年48歳でピストル自殺で亡くなったのですが
死後見つかった最後の作品。

少 し前、三島由紀夫の最後の作品「豊饒の海」四部作を
数ヶ月かけて読んだけど全然!読みこなせなかった。
起承転結、輪廻転生ってことがちょっと脳をかすめたくらい。
繊細で几帳面、ものを多角的に捕らえられる才能豊かな人だと思うけど、
言葉の使い方や語彙が難しいこともあり、
自分の心に言葉がなかなか染み入ってこない。

 ブローティガンのこの作品、えっ?えっ?これ小説??
なのですが、捕らえどころもなく、脈絡もないような内容が
「不運な女」って誰?の期待を裏切りつつ、
あっという間に読める
 何だか心の回りをあったかな風が舞う不思議な本。文。

 いつも墓地に惹かれ墓石に書かれた名前や没月日を読みながら
墓地の中をめぐり、死者の間を歩き回って、彼らについて考え、
かれらは何者だったのか、
どんな人生を送ったのだろうかと思い巡らすブローティガン。

 彼が目の前で動いているように感じる。

彼の作品をほとんど訳した藤本和子さんは言う。

 『人間の生には、口にできないような苦しみが、
言葉ではとてもいい表せないような極限的な傷があって、
そのような苦しみを前にしてわれわれにできることは、
誰もたった独りで苦しまなくていいように、そのことを代わって語ることだけ。
そして彼(リチャード・ブローティガン)は終生、
自分の魂を救うために本を書き続けた、ということなんです。』

 表面も作品もまったく正反対なほど違うけど
死をずーーーーーーっと意識しつつ生きてきた内的過程は
たぶん三島もブローティガンも
とても似通っているような気がする。
(そういえば時代も重なる...)
[本]

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